毎年悩まされるカメムシによる斑点米の被害。
カメムシが水稲の汁を吸うことで発生する斑点米は、お米の等級が下がってしまう原因となります。せっかく手塩にかけて育てたお米を、カメムシのせいで台無しにされるのはたまったものではありません。
カメムシの被害を抑えるためには、殺虫剤によるカメムシ防除だけでなく、実は適切な畦畔管理も重要になってきます。
そこで今回の記事では、カメムシを発生させないための、生育後半の畦畔管理についてご紹介していきます。この記事を見ることで、次のような疑問を解決することができます。
今回の記事では、肥料農薬販売店で8年以上勤務する筆者が、おすすめの除草剤と交えながらご紹介していきます。
また、除草剤以外で畦畔の雑草抑制方法を知りたい方は、下記の記事にて詳しく解説しております。お時間がありましたらこちらもご覧ください。
カメムシを引き寄せる原因
畦畔に生えるイネ科の雑草は、カメムシなどの害虫の温床となります。カメムシはイネ科雑草の種子が大好物なので、出穂したイネ科雑草が多いとカメムシを引き寄せてしまいます(#好みはカメムシの種類にもよります)。
そのためカメムシの発生を抑えるためには、カメムシのご馳走となるイネ科雑草を出穂しないように畦畔管理するのが重要です。そのためには、草刈り作業が必要になってきます。
しかし生育後半の夏場は猛暑日が続くため、草刈り作業は生死にかかわる重労働に…。
しかも夏場は雑草の再生力が高まるため、すぐに再生する雑草に心まで滅入ってしまいます。
そこで畦畔の雑草管理には、除草剤を利用するのがおすすめです。
今回ご紹介する除草剤は、畔が崩れる恐れの少ない、地上部だけ枯らすタイプの除草剤です。
また除草剤と言っても、世の中にはたくさんの種類の除草剤が出回っています。種類によっては効果が異なるため、用途や撒く時期を間違えてしまうと、かえって逆効果になってしまう恐れも。
そのため畦畔管理に失敗しないための、畦畔に適したおすすめ除草剤を具体的に紹介していきます。
バスタ
こんな時に使える!
- 今生えている雑草を素早く枯らしたい
- 畦畔の形を崩さない為に、雑草の根だけ残したい
- 人体や環境に優しい除草剤
バスタは、葉や茎などの薬剤のかかった部分から吸収されて、除草効果を発揮する除草剤です。
イネ科雑草だけでなく広葉、一年生、多年生雑草を問わずほとんどの雑草に有効です。草丈が20㎝以下の雑草に有効で、生長し過ぎた雑草には効かなくなってきます。カメムシの大好物であるイネ科雑草の出穂を抑えるためには、草丈が低いうちに散布するのが有効なので、早めの散布が望ましいです。
また、スギナやアサガオ、イボクサに対しても、倍率を濃くすることで除草効果を発揮します。
雑草の地上部だけ枯れ、根は完全に枯らさないため、畦畔が崩れるのを防ぐことができます。
薬剤は地面に落ちると不活性化するため、根から吸収されることはありません。また、地面に落下した有効成分は、土壌微生物により素早く分解されるため、土や環境にも優しい除草剤です。
注意するポイント
水稲や水面に掛かってしまうと薬害を起こす可能性があるため、強風時などの無理な散布を控えるようにします。また散布する時は、散布後6時間以内に雨にの降らない日を選ぶようにしましょう。
また水稲の出穂間際に散布してしまうと、畦畔に隠れていたカメムシが水田へと移ってしまいます。移ったときに水稲が出穂していると、カメムシのターゲットにされて斑点米が増える恐れが。
逆に穂が出ていなければカメムシは定着しないため、バスタの散布は水稲の出穂時期以外を狙うようにします。
バスタの欠点は他にもあります。バスタは薬剤がかかった部分しか枯れないため、まんべんなく適格な散布が必要となります。
そんなバスタの欠点を克服し、まんべんなく液剤を散布するには、バスタ専用のノズルカバーがおすすめです。カバーのおかげでドリフトが減り、水稲の薬害も出にくくなります。効率的な散布によって液剤の量も少量に抑えられるため、作業の効率化にもつながります。バスタを散布する時には重宝する一品です。
初めてバスタを使われる方は、下記のサイトで使い方を詳しく解説しております。
ザクサ
こんな時に使える!
- バスタより強力な除草剤が欲しい
- 天候に左右されにくい除草剤が欲しい
- 水稲に薬害の出にくい除草剤が欲しい
北興化学工業株式会社から発売されているザクサは、先ほど紹介した「バスタ」よりも後に開発された除草剤です。
「バスタ」と名前が似ていて混合してしまいがちです。その効果も似ていますが、ザクサの方が有効成分の抽出がしっかりされているため、効き目と効力が強くなっています。ザクサは一年生から多年生雑草まで、幅広い雑草に対して高い効果を発揮します。
また、バスタよりも水稲への薬害の影響が少ないため、畔際ギリギリまで散布することが可能。
散布すると1~3日ぐらいで効果が表れはじめて、みるみるうちに雑草が枯れていきます。抑制効果が40~50日程度続くことで、頑固な雑草も長期間にわたって抑制することができます。
バスタと同様に土壌に落下した有効成分は、微生物によって速やかに分解されるので、土や環境にも優しい除草剤です。散布後に雨が降っても、1時間程度経過していれば大丈夫です。
注意すべきポイントはバスタと同じです。水稲の出穂間際に散布してしまうと、カメムシが水田に移ってしまい、結果的にカメムシの被害が多くなってしまいます。
散布の際は水稲の出穂時期をずらして、見極めて散布するようにします。
グラスショート
こんな時に使える!
- 畔やのり面などの斜面に適した除草剤
- 雑草の生育を抑えたい
- 景観を保ちたい
グラスショートは、雑草の生育を長期間抑制する除草剤です。パッケージの蟹がカワイイ除草剤ですが、見た目に寄らない効果を発揮します。
他の除草剤とは異なり、雑草を完全に抹殺するのではなく、成長を抑える効果があります。そのため生長しない雑草が残り、畦畔の裸地化による土壌流亡や畦崩れえを防ぎます。
グラスショートの場合は、散布前に一度草を刈る必要があります。しかし一度草刈りをした後にグラスショートを散布してしまえば、その後の雑草の生育が抑えられ畦畔管理が楽になります。
のり面にも適した除草剤のため、傾斜地での危険な草刈り作業を軽減することができます。
また除草剤を撒いても荒野化しないため、景観が保たれる見た目上のメリットもあります。
生長が抑えらた雑草は残りますが、イネ科雑草の出穂を抑えることはできます。そのためカメムシの発生予防にもなり、斑点米の被害を抑えられます。
またイネ科雑草だけでなくスギナ、ヨモギなどの多年生広葉雑草に対しても長期間生長を抑制。キシュウスズメノヒエやイボクサ、クズなどにも抑草効果や、枯殺効果を示します。
注意すべきポイントは、他の除草剤と同じようにドリフトに注意する点。または、散布後6時間以内は雨の降らない日に散布するようにしましょう。
まとめ
今回はカメムシを発生させないための、畦畔用除草剤を3種類ご紹介させていただきました。
暑さに耐えながら草刈りをする必要が無いため、畦畔管理には除草剤を使用するのがおすすめです。
また雑草の発生を抑えるには、除草剤以外にも防草シートなどの利用などもあります。防草シートに関しては下記の記事で詳しく解説してますので、お時間がありましたらご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
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