水稲の高温障害対策 暑さに負けない稲の育て方

営農情報

近年連日のように続く、夏の異常な猛暑日。

箱根駅伝のように、毎年新記録を叩き出す最高気温に、心も体もへばってしまいます。

猛暑でへばってしまうのは人間だけではなく、お米の生育にも大きな打撃を与えています。

  • お米の収穫量が減ってしまった。
  • 品質が下がり、等級や販売価格が下がってしまった。

近年の高温の影響により、このような悩みをお持ちの米生産者の方も多いと思います。

今回の記事では、例年の猛暑日でも収量が減ったり、品質が下がらない強い稲の育て方をご紹介します。個人農家でも取り組みやすい内容です。

この記事を読むことで、お米の高温障害の対策方法を知ることができます。

結論から先に言うと、高温障害を予防するためには、施肥や土づくりが大切です。

それでは、なぜ施肥と土づくりが大切なのかを、詳しく解説していきます。

高温障害のメカニズム

高温障害の対策方法を解説する前に、改めて高温障害とは何ぞや、ということから説明していきます。早く本題を知りたい方は、読み飛ばしていただいても大丈夫です。

高温障害とは、お米の粒が大きく育つ大事な時期に、気温が高くなりすぎることによって、品質の低下や収量の低下を引き起こす生理障害です。

気温が高くなることで稲の光合成能力が低下し、米へのデンプンの蓄積が不十分になってしまいます。

また気温の上昇に伴い、稲の呼吸量と蒸散が増加します。呼吸量が増加すると、デンプンの消耗量が多くなり、米が痩せてしまいます。蒸散が多くなることで、水分が多く抜けて萎れてしまいます。

このように、輪をかけたようにお米の品質が悪くなります。

高温障害は出穂後20日間までの、平均気温が26℃を超えた程度から発生しやすくなると言われています。さらに気温が1℃上がることに、約10%の割合で発生が増加しやすくなります。

また日中では35℃、夜間で30℃を超えると発生の可能性が出てきます。暑くなればなるほど、発生の割合が上がります。

また要因は気温だけでなく、窒素濃度などのその他の条件が重なることで発生が増加します。

具体的な症状

水稲の高温障害の症状として以下のものがあります。

白未熟粒                                          玄米の一部が白濁して見た目が悪くなることで、米検査での等級が下がってしまう。高温と窒素不足、日照不足などの条件が合わさって発生することが多い。
胴割れ米                                         玄米に亀裂が入り割れやすくなる。ふるい下米が増加して主食用収量が減ってしまう。登熟期後半の降雨、乾燥などの水分量の変化が原因とされる。また、出穂後10日間の日最高気温の高さに影響を受ける。
未熟粒                                          充実度が低下して扁平、タテ溝の深い粒。見た目が悪くなるため、米検査での等級が下がってしまう。

高温障害はお米の外観品質を下げるため、検査等級の低下を招きます。またくず米、ふるい下米などの発生が増え、ロスが多くなってしまいます。

その結果お米の売上金の低下や、収量の低下につながってしまいます。

次にこのような事態を避けるための、具体的な対策をご紹介します。

ケイ酸カリの施肥による対策

ケイ酸カリを圃場に施肥する方法は、個人の農家でも簡単に取り組める、対策方法のひとつです。

水稲にケイ酸カリを吸収させることによって、葉・茎、根が丈夫になる効果が得られます。

なぜ葉や茎が丈夫になるかというと、ケイ酸が植物内に吸収されると、葉の細胞の表面に蓄積されます。そして、ケイ化細胞という形でコーティングされ、葉の表皮細胞の外側を形成して、葉の厚みが増します。

そして葉や茎が丈夫になり、葉が直立して太陽光を取り組む面積が増えます。その結果として、ケイ酸カリを施肥することによって光合成の効果が高めることができるのです。

また、葉や茎が強くなることによって、台風などの強風による倒伏の被害を軽減することができます。

葉や茎が硬いことによって、カメムシなどの害虫による食害の被害軽減にもつながります。

さらにケイ酸カリを施肥した稲は、稲体の温度が上がりにくく、高温障害の影響が出にくいことが確認されています。

このように、ケイ酸カリには一石二鳥の効果があり、施肥して損はない肥料です。

ポイント ケイ酸カリを施肥することで、高温障害にも強風にも強い稲を作れる。
デメリット 原料高騰などの影響で肥料価格が上昇しているため、コストがかかる。施肥する労力が掛かる。

土壌診断と堆肥や窒素分の投入

高温障害対策には、堆肥の投入も有効的です。

堆肥を投入することで、根の張りが良くなったり、稲に窒素分を安定供給することができます。根張をよくして根を活性化させることで、葉からの蒸散回数が増え、稲体の温度を下げる効果が期待できます。

また登熟期後半の窒素分の安定供給による収量の増加や、白未熟米の発生を抑制する効果があります。

堆肥の投入は、作度深を20㎝以上深くすることで、高温障害の発生がしにくくなります。

しかしここで注意すべき点は、圃場の土壌状態を確認したうえで、適量の堆肥や窒素肥料を施肥することです。

過多な堆肥や窒素の投入は、逆に籾数が多くなり過ぎることで、倒伏やの原因になってしまいます。倒伏してしまうと、収穫が困難になったり、籾が水につかって発芽してしまい品質が低下します。

そのため、土壌診断を行ってから適量の堆肥を入れるようにしましょう。

土壌診断は最寄りのJAで行ってます。

土壌診断について | JA全農
JA全農の土壌診断に関する情報を掲載しています。
ポイント 土壌診断を実施して、土壌の健康状態を確認する。適量の堆肥を投入する。
デメリット 過剰な堆肥、窒素の投入は籾過多による倒伏を招く恐れがある。

適切な水管理

水の管理を徹底することで、高温障害対策につながります。

以下のポイントに意識して、水管理を行いましょう。

  • 分げつ期には無効分げつの発生を抑えるため、深水になるように水管理する。
  • 中干は土壌状態によって調整する。葉色を濃く保たせる。
  • 出穂期から20日間程度は、日中は自然落水させて、夕方以降に入水する水管理を心掛ける。
  • 登熟期から収穫間際まで、できるだけ通水を続ける。

まとめ

水稲に有効な高温障害対策法についてご紹介させていただきました。

土壌管理や水管理、ケイ酸カリの施肥を行うことで、高温障害対策につながります。

ぜひ、この記事でご紹介した内容を実践してみてください!

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

農業や旅行関係の情報発信しているミワッカと申します。現在、農業と旅行で自由に生きられる働き方を模索中。

多趣味なので、たまに違う内容の記事も投稿します。

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