GAPとは? 目的とメリットを分かりやすく解説

営農情報

今回は、農業分野におけるGAPの意味について解説します。

 GAPとは、Good Agricultural Practiceのイニシャルを取った略語で、良い農業の実践という意味です。農林水産省はこれを農業生産工程管理手法と位置付けています。これだけでは分かりにくいですが、GAPは生産者が儲かる仕組みではなく、みんなが農業を行う上で守るべき規範やチェックリストのようなものです。食品安全・環境保全・労働安全の観点から、生産者自らが生産工程を管理して、工夫と改善をする取り組みです。また、GAPの手順を簡単に説明すると、下図のPDCAサイクルのようになります。

①農作業の計画を立てチェックリストを作成します。     
②作成したチェックリストを確認しながら実際に農作業を行います。
③作業を行い記録を付けて、改善点を探します。
④最後に見つかった改善点を見直し、次回の作付けに役立てます。

 

また、このGAPの取り組みを第三者に評価してもらうことをGAP認証と言い、スーパーに売っている野菜にも認証マークが付いていたりします。

GAPの目的とメリット

 GAPに取り組むと以下の様なメリットがあります。

  • さまざまなリスクの回避
  • 農薬の飛散や廃棄物による環境汚染等のリスク回避
  • 残留農薬や異物混入などの食品安全性のリスク回避
  • 作業中の事故によるリスク回避
  • リスト化による作業効率アップ
  • 経営状況の改善
  • 栽培管理のデータ化により不慣れな人でも管理が可能
  • 栽培方法の元一化により、無駄なコストや作業の削減
  • 残業時間の減少など、働き方改革に取り組める
  • 社員の働きがいがアップし職場の雰囲気が良くなる
  • SDGsに貢献できる

 また、消費者にとっても以下の様なメリットがあります

  • 安全な農産物を買うことができる
  • 生産者の取り組みが見えて安心
  • 生産者の情報が分かるので安心

GAP誕生の背景

 GAPは1990年代にヨーロッパで誕生しました。誕生した理由の一つは、第二次世界大戦後のヨーロッパでは農作物の多収化のため、化学肥料や農薬を必要以上に多用していました。しかし、農薬の多用により農産物や環境に悪影響が出ていたことが判明。そして、農産物や環境への悪影響を改善するためにGAPの取り組みが始まりました。もう一つの理由は、当時のヨーロッパのスーパーマーケットでは、農業生産者に対して生産工程や安全管理などのに基準を設けていました。しかし、生産者ごとによって出荷や販売方法がバラバラだったため、スーパー側は管理するのが大変でした。また、世界中の農作物を仕入れたいものの、基準を世界中の生産者に伝えるのは困難であったため、何か良い方法が無いか模索しました。そこで、今までバラバラだった各スーパーマーケットの基準を統一化することにしました。基準を共通化することで、世界中のどこから仕入れても同じ基準をクリアした農産物を仕入れられるようになりました。また、基準に対する生産者の取り組みレベルが、基準をクリアしているかを客観的に評価するために、第三者が判断する仕組みを検討しました。これがGAPの始まりであるグローバルGAPが誕生した経緯です。そして、現在では様々な種類のGAPが誕生しました。

GAPの種類

 GAPの取り組みは、第三者からの認証を受けることで、さらに信用度が増して販売拡大に有利になりまます。GAP認証には大きく分けて以下の3種類があります。

GLOBALG.A.P(グローバルギャップ)

 ドイツ発祥のGAPで、世界で最も普及しているGAPです。EUや海外へ農産物を輸出する場合必ず取っておきたい認証基準です。認証取得の流れは、チェックリストを入手し、基準に沿って生産や経営状況の確認を行います。そして、認証機関に審査の申し込みを行い審査してもらいます(審査費用は規模や農作物により異なりますが結構高いです)2019年度末時点で、日本国内で669件の生産者が取得しています。(詳しくはGAP普及推進機構/GLOBALG.A.P協議会HP参照)

JGAP(ジェーギャップ)

 2005年に日本GAP協会が策定した日本発祥のGAPです。認証を受けることで、消費者に信頼できる農場であることをアピールできます。認証取得するためにはまず、日本GAP協会のHPに掲示してある、農作物それぞれの適合基準を確認します。適合基準に沿って経営の見直しと生産を行います。そして認証機関に審査の申し込みを行い、適合か不適合等の審査を受けます(審査費用は規模や作物等により異なります:詳しくは日本GAP協会HP参照)。2019年度末で、4315件の生産者が取得しています。

ASIAGAP(アジアギャップ)

 ASIAGAPと同じく日本発のGAPで、ASIAGAPの改良版です。国際的なNPOから承認を受けているため、農作物の輸出に有利な認証基準です。2019年度末で、2379件の生産者が取得しています。

その他のGAP

 その他にも、都道府県によるGAP、生協や農協によるGAP、イオンなどによる独自のGAPがあります。

まとめ

 GAPについて簡単に説明させていただきました。GAPとは、持続可能な農業を行う上で、守るべき規範のようなものになります。GAPに取り組むことで、経営改善や無駄なコスト・労働時間の削減、リスクの回避ができ、職場環境の改善にもつながります。GAP認証を受けなくても、GAPに取り組むだけで様々なメリットが得られます。また、GAP認証を受けると、海外への販路拡大や、消費者に対して安心安全な農作物であることがアピールできます。この記事を読んで、GAP取得をお考えの方は、まずは費用も安くて取得がしやすい、JGAPなどの取得をおすすめします。詳しくは、日本GAP協会のHPより詳細をご確認ください。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考書類:農林水産省HP、日本GAP協会HP、GAP普及推進機構/GLOBALG.A.P協議会HP、日本の農業図鑑「八木宏典監修」ナツメ社

農業や旅行関係の情報発信しているミワッカと申します。現在、農業と旅行で自由に生きられる働き方を模索中。

多趣味なので、たまに違う内容の記事も投稿します。

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